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麗しきタイム・トラベラー?時をかける老女
「ごめんくださいまし~。ヘルパーの○○田でございますぅ~。」
その日もN代(当時4?歳)は勝手口から、
元気で明るい声をかけた。

そこに、ニコニコ笑顔で現れた銀髪が眩しい美ヶ原琴子さんは当時7?歳。
お育ちが良い、お品のある元お琴の師範である。
元というのは、脳血管の病気の後遺症で身体の左側が少々不自由になり、
残念ながら、奏者&師範職からも遠ざかるを得なくなったのでございますのよ。
それでも、生活援助に伺う度に、
過去にご本人の奏でた筝曲の数々を録音したテープを聴いておられた。
その日のラジカセからは、
八橋検校作曲の六段の調が優雅な音色を奏でておりましたですわ。

そんな琴子さんではありますが、如何せん、加齢には勝てません・・。
ときたま、おボケが出るようになられる前は、
何事にもきちっとしておかなければ気が済まないお人柄であらせられたようで、
その日も、
「お客さんが見えるというので、朝から念入りにお掃除をしていましたのよ。
隅々までピッカピカに光輝くほど綺麗でございましょ?」
と嬉々として自慢をする。

だが、綺麗に掃除をした?とは、本人が今そう思っただけで、
家中にはモノが散乱している。

仕事である生活援助の掃除をしようにも、「念入りに掃除をしたばかり!」
と言い張る優しい琴子さんを傷つけたくはない。
利用者様のその日の御気分に合わせての臨機応変な対応も必要なのですのよ。

取りあえずは、お茶でも飲みながら世間話に興じようと、
琴子さんにはお茶を淹れ、 ( ^-^)o旦~~
N代は持参したペットボトルのお茶を飲み飲み、
彼女の過去の生○流筝曲師範としての数多の栄光話を聴いていましたの。

そこで、琴子さんはお手洗いにお立ちになりました。
10分後に、すっきりした顔で居間にお戻りになられた琴子さん。


突然に、

「あら?あなたはどこのどなた様でしたかしら?」と、のたまわれる。

排泄という行為で、おボケスイッチが入った?

まぁ、これもいつものことなので、


「通いの家政婦みたいなものですわ。琴子様。」と申し上げたら、

「家政婦・・・・・・・???σ( ̄、 ̄=)ンート.........
 あっ、わかりましたわ。女中のことでございましょ。
 わたくしの家で言えば、ネエヤのことざましょ。」


しばしの間が空き・・・・


琴子さんの記憶を司る海馬は瞬時に時空を飛び超え、
何やら過去へ過去へと向かわれた御様子・・・。

いざ!麗しき過去へ・・・ε=ε=ε=ε=ε=(o゚ー゚)oビューーーーンッ!!


そして、数秒後。


ありゃま。(・_・;)_・;)・;);)) ナントッ!! 
20歳の頃の乙女盛りに突入なされた御様子。


「あら、もしかしたら、あなたはネエヤのウメ?
それにしても、ずいぶん老けたわね。いろいろと苦労したのねぇ。」
と、のたまわれる。

(えっ?老けたって・・・? 私の今現在の顔を見て言ってるのかしらん?
 うーん。複雑。  だけど琴子さんは今はタイム・トラベル中・・。
身体はヨボヨボヨロヨロでも、心だけは若返り、麗しき乙女期を漂っておられるはず。
と思いながら、話を合わせる。)


今までの彼女との世間話の中でよく聞かされていた優雅なお嬢様時代。
資産家であり、家も大邸宅であった琴子さんの御実家には、
遥か青森県の戸来村からやってきた「ウメさん」というネエヤさんがいたらしい・・・。


N代はすぐさま、ネエヤの「ウメ」に成り切り、
「あのぅ・・お嬢様、、、、
お嬢様のお部屋のお掃除を始めたいのでございますが、よろしゅうございますか?」
と探りを入れる。


すると、


「朝から晩まで母がウメをこき使うから、手が皸(あかぎれ)だらけねぇ。
今日は掃除はよろしくてよ。
ところでウメや。あなた確か出戻りだったわよねぇ?
ほら、確か祝言を挙げたばかりの相手に赤紙が来て、すぐに出征して、
パプアニューギニアで、陸軍2等兵の身分のままで、
あっけなく戦死したんだったわね。
そうよねぇ・・・
13歳でネエヤとして奉公に来て、わたくしのように女学校にも行かせて貰えず、
19歳の秋にこの家からお嫁に行ったはいいけど、
あの柳家金語楼に似た結婚相手とはすぐ死に別れですものね。
ウメは本当に不幸な身の上に生まれついたのねぇ。
ほんと、可哀想に・・・・・(゜-Å) ホロリ 」


と実際に涙ぐまれる。


「お嬢様ぁ・・・(/_;) ありがとうございます・・・・
そんなに心配して頂いてウメはほんとに幸せ者でございますぅぅ.............
゜゜・(/□\*)・゜゜・わ~ん 」

とウメに成り切っていたN代も貰い泣きをするほど、
琴子さんは心お優しい大昔のお嬢様なのでございますのよ。


(だけどさ、ウメ=N代の戦死した亭主は柳家金語楼に似ていたって言われてもねぇ・・・
どうせなら、「美貌の裏に宿る孤独の影と背中に漂う虚無・・。」
みたいな・・・眠狂四郎=市川雷蔵にして欲しかったわよっ!(o ><)oもぉぉぉ~っ!


だが、過去は絶対的な事象として存在しており、
映画のターミネーターのように都合よく、人生も過去も未来も変えられない。
「柳家金語楼」でも、まっ、いいか。  ...ρ(..、)イジイジ・・
とか、思いつつ、感涙に浸っていると、まだ涙も乾かないうちに、

突然真顔になり、

「えーと・・・ウメとわたくしは同い年だから、まだ20歳よね。
大東亜共栄圏の夢は儚く消えたけど、
玉音放送で陛下がおっしゃっていたじゃない。もう戦争は終わったって。
だからウメも人生これからやり直せるじゃない。
そうだわ。わたくしがウメの再婚のお見合い相手を探してあげるわ。
どんな殿方が好みなの?条件はあるの?
でもねぇ・・・なにしろウメは出戻りだから、厳しい条件は付けちゃダメよ。
そうよ、ウメは出戻りなんだから・・・。」

と何度も「出戻り」を連発しながら好みのタイプをお訊きになる。


(なんか・・少しだけ、何事も上から目線が気になったが、
今は利用者様がタイム・トラベルの真っ最中。
時代も年齢も錯綜?しているが、
琴子さんの頭の中では、確実にネエヤのウメは存在する。)



「そうですわねぇ。できましたら、顔立ちはアンソニー・パーキンスで、
口うるさくなくて、禿げ頭でなくて、お金持ちで、住み込みの女中さんがいて、
浮気者でなく、舅と姑と小姑とがいない人をお願い致しますですわ。
お嬢様。(*"ー"*)フフッ♪♪」

と、N代は現実の結婚生活の不平不満等を思い起こしながら、
どうせ、琴子さんは、今聞いたことは明日になったら何も覚えていないのだからと、
ここぞとばかりに理想の結婚相手をお願いしたのでありました。(^_^;)


「えっ?なんですって?アンポンタンみたいな人がいいと言うの? 
いやだわ。ウメったら、オーホッホ。あなたボケてるんじゃないの?
そんなアンポンタンな人より、私の知り合いに東千代之介にそっくりな人がいるのよ。
今、その人の写真を見せてあげるわ。ぜひその人とお見合いなさいな・・。」
と言って、隣室へ入っていかれ、約5分後に古ぼけたアルバムを持って居間に現れる。

「ほら、見て見て!この人よ。東千代之介にそっくりでしょ?」

と言いながら見せてくれた写真に写っていた人物は、
時代劇スターの美剣士・東千代之介には似ても似付かぬ、
十数年前に亡くなられた琴子さんの御主人様の
出征前のセピア色をしたお写真でありました。

そして、ウメ=N代はお見合いの日取りを決めて頂き、
(もちろん、次回の生活援助の日ですわ。)
ニコニコ笑顔でお上品なしぐさで手を振っておられる、
美ヶ原琴子様宅を後に致しましたのよ。
☆⌒(*^-゚)ノ~♪ お嬢様ぁ~。お見合いの件。ヨロシクデスゥ~♪~ヾ(゚-^*)⌒☆
---つづく---
110222r
忘れじの記憶の園の断片をつなぎ合せて過去とたはむる
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テーマ : ひとりごとのようなもの ジャンル : 日記

tag : パプアニューギニア 赤紙 陸軍2等兵 大東亜共栄圏 玉音放送 柳家金語楼 眠狂四郎 市川雷蔵 東千代之介

モンスター高齢者VS.モンスターヘルパー
「ごめんくださいまし~。ホームヘルパーの○○田でございます~。」
なぜか、「家政婦は見た!」の市原悦子さん口調で勝手口から声をかけたが、
返事はない・・。
キャンセルの連絡は受けていない。
再度大きな声で、
「ごめんくださいましぃ~!!偏屈さ~ん。いらっしゃいますぅ~?
ホームヘルパーの○○田でございますぅぅ~~!!」
と声をかけると、
ときどき、加齢に因るまだらボケが出現するらしい
独居老人(男・8?歳)の偏屈爺男さんがやっと出てきた。
返事もしないで、仏頂面で勝手口のドアを開け、
超ご機嫌斜めな顔で家の中に招き入れてくれる。


「あーあ、また今日もなのぉー・・・? この偏屈ジジィめ!」と、
偏屈爺男さんに聞こえないような小声で呟きながら、
N代(4?歳・仮名)は引き攣った愛想笑いを浮かべて偏屈家の中に入る。


この偏屈爺男さん。
昔は高校の数学教師をしていたらしいが、性格があまりにも偏屈過ぎて、
20代~30代にかけて、お見合いも何度か経験したようだが、
結局は縁談は纏まらず、生涯独身を貫いておられる。
加えて、極端な人間嫌いのようで、
一度、お愛想で深くも考えずになにげなく、
「お独りでお寂しいですわね・・・」と声をかけたら、
「寂しくなんかないっ!独りという自由は何物にも代えがたいんじゃっ!!」
と、烈火のごとく怒鳴られたことがあるので、
どうでもいい天気の話しかしないようにしているが、
それでも、何を話しかけても、返事を返されることはめったにない。

お年のせいで動作はスローモーションだが、
誰の目にもそれなりに元気そうに見える。
如何なる理由でホームヘルパーが必要なのか判らない御老人である。


家に入り、再度挨拶をしても、お天気の話しをしても、
偏屈さんは相変わらず仏頂面で無視するので、
さっさとエプロンを付け、今日の家事援助予定を一方的に告げて、
先ずは部屋に散乱しているものを片づけ、掃除を始めようとしたら、
わざと?なのか、急にボケの谷間に落ちてしまったのか?
ただ単に遊んで欲しいのか?
新米ヘルパーだと思ってナメているのか?
偏屈ジジィが本棚の本を一冊づつ畳に落とす。

「なんなのよー!このクソジジィ!!」と心の中で叫びつつも、
女性演歌歌手のような、わざとらしさが見え見えの、
自分でも気持ち悪っ!と思えるような作り笑顔を絶やさずに、
偏屈さんが散らかした色褪せた本を本棚に入れ直す。

(あーあ・・・また運悪くボケが出たのかしら?
今は正気なのか?それとも、ボケてるときなのか?
の境界線がはっきりしないし、現実の世界にいるのか、
それとも一時的にあっちの世界に行ってるのかの判断も難しいから
ほんと、まだらボケが一番厄介なのよね・・。
ボケるんなら完全にボケて欲しいものだわよ。
そのほうが対処もしやすいのに・・)

などと思いながら、
ゴミ、否、まだらボケ爺様と格闘すること15分が経過・・・。

いくら、ホームヘルパーという、必殺仕事人を自負していても、
余りにも理不尽な行為には堪忍袋の緒が切れる。
たまらずに、「止めて貰えませんっ!」と言っても止めないので、
「おらぁ!止めんかーーーーいっ!なめたらあかんぜよっ!
と大声で怒鳴ったら、
ビビったのか、一時的に正気に戻ったのか、
急に借りてきた猫状態になり、

「ごめんよ!ごめんよ!母ちゃん。ごめんよ~。」
と言いながら土下座をして謝り、
何故かは知らねど、今度は急にお風呂に入りたいと言い出した。

「んんっ?母ちゃん?私があんたの母ちゃん?
娘ぐらいの年なのになんで母ちゃんなのよ!?」
とまたしても心の中でツッコミながらも、
そこは、新米だけどプロのホームヘルパー。

「はいはい、じゃ、お掃除が終わったらすぐにお風呂の掃除をしますから、
少し待っていてくださいね~♪」と
N代もコロッと態度を変え、
まだらボケ偏屈爺様を縁側まで引きずるように連れて行き、
年代物の籐椅子に座らせて日向ぼっこをさせながら、
偏屈さんの好きな歌、「カスバの女」を子守唄変わりにハミングしながら、
冬なのに汗水垂らして動きまわること一時間・・。

「偏屈さ~ん。お風呂が沸きましたですよ。
湯加減は偏屈さんの好きな43℃にして置きましたですよ。
どうぞ、ごゆっくりお入りになってくださいまし~」
と、またしても、市原悦子さん口調で風呂場まで促す。

どっこいしょ・・と声を出しながら、縁側の籐椅子から起きあがった偏屈さん。
突然にN代の手を取り、
「母ちゃん、今日はボクとても疲れてるんだ・・
だから、母ちゃんも一緒に入って体を洗って欲しいんだ。
母ちゃんも早く裸になってよ~♪」と
訪問したときのあの仏頂面と偏屈態度は何処へやら?
180度の変身ぶりで甘えてくる。


ヤバイ!ヤバすぎるっ!


家事援助ヘルパーは「入浴介助」はできない規則になっている。
「決められた援助項目だけしかできない決まりになってますから。」
などと説明しても、おそらく今の状態では解ってくれそうにもないことは明らか。
それに、利用者様がヨボヨボ、ヨロヨロの御老体でも、
男の筋力には負けるかも・・?
N代はどちらかというと男心をそそる自称スレンダー美人?である。(^^♪
あからさまな拒絶の態度を示したら、何をされるか判らない。

そこで、一計を案じたN代は、
「じゃ、5分間だけ待ってて~ん♪ウフ☆(^_-)-☆」と、
昔の恋人にも、今の夫にも、一度も出したことのないような甘えた声を出し、
なんとか独りで風呂場に行かせることに成功。

そして、風呂場でワクワクしながら母ちゃん?を待っているであろう偏屈さんに、

「偏屈さん。実はワタシね・・今日は風邪気味なんです~。
もし偏屈さんに風邪を移したら申し訳ありませんので、
またの機会に御一緒させて頂きま~す。ごめんなさいね~。」
とドア越しに声をかけた。

案の定・・怒っているのか、
突如として偏屈ジジィモードに突入したのか定かではないが、
返事はない。

N代は急いで帰り支度をして、勝手口のたたきに立ちながら、
偏屈さんが風呂場から出てくるのを見計らう・・。
思った通り、やっぱり・・・素っ裸で出てきた偏屈さんに帰りの挨拶をして、
猛ダッシュで偏屈宅を出た。

普段はスローモーションの動作しかしない爺様だけど、
まかり間違って、火事場の馬鹿力で持って走って追いかけられても困るので、
必死でママチャリをこぎ、やっと人通りの多い商店街まで辿り着き、
息を切らしながら振り返ると、真冬だというのに夏物のパジャマを着て、
母ちゃんを見失ったのか・・・・・
真っ赤な夕焼けを背にして、○○商店街の入り口で呆然と佇む偏屈さんの姿があった。



月日が経つのは早いもので、あれから十数年・・・
今、○○商店街をいつもニコニコと好々爺の顔をしながら、
車椅子に乗せられて、若いヘルパーさんと散歩している姿を見かけるが、
御齢9?歳におなりのはず、
完全におボケお爺様になられたのだろうか・・?

そしてまだ、若いヘルパーさんに「母ちゃんと一緒にお風呂に入りた~い!」
と駄々をこねていらっしゃるのだろうか・・・。
110205ri
蜜月の日々は過ぎゆき忘れ得ぬ愛しき人を想ふ黄昏
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テーマ : シニア・エッセイ ジャンル : 日記

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プロフィール
Author:千風
気が付けば、六十路.........。 老眼鏡無しには新聞も本も読めず、 体の各部位が少しづつ、 壊れゆく 今日この頃、 この世での 残り時間を思うと、気持ちだけはアセアセ、ジタバタ、 ドタバタ。 心に反比例して 体の動きは うだうだ、だらだら、 とろとろ、のんべんだらりん、だらだらりん・・ついでに座布団に つまづいて すってんころりん。 ころころりん・・。 そんな明日をも知れぬ シニア女が老いと死の狭間で 揺れ動く、 切なくも哀しい乙女心。 じゃなかった・・(^_^;) 「お婆心?」を 時には超真面目に、 また或る時はユーモラスに、 独断と偏見思考で綴っています。
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