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モンスター高齢者VS.モンスターヘルパー
「ごめんくださいまし~。ホームヘルパーの○○田でございます~。」
なぜか、「家政婦は見た!」の市原悦子さん口調で勝手口から声をかけたが、
返事はない・・。
キャンセルの連絡は受けていない。
再度大きな声で、
「ごめんくださいましぃ~!!偏屈さ~ん。いらっしゃいますぅ~?
ホームヘルパーの○○田でございますぅぅ~~!!」
と声をかけると、
ときどき、加齢に因るまだらボケが出現するらしい
独居老人(男・8?歳)の偏屈爺男さんがやっと出てきた。
返事もしないで、仏頂面で勝手口のドアを開け、
超ご機嫌斜めな顔で家の中に招き入れてくれる。


「あーあ、また今日もなのぉー・・・? この偏屈ジジィめ!」と、
偏屈爺男さんに聞こえないような小声で呟きながら、
N代(4?歳・仮名)は引き攣った愛想笑いを浮かべて偏屈家の中に入る。


この偏屈爺男さん。
昔は高校の数学教師をしていたらしいが、性格があまりにも偏屈過ぎて、
20代~30代にかけて、お見合いも何度か経験したようだが、
結局は縁談は纏まらず、生涯独身を貫いておられる。
加えて、極端な人間嫌いのようで、
一度、お愛想で深くも考えずになにげなく、
「お独りでお寂しいですわね・・・」と声をかけたら、
「寂しくなんかないっ!独りという自由は何物にも代えがたいんじゃっ!!」
と、烈火のごとく怒鳴られたことがあるので、
どうでもいい天気の話しかしないようにしているが、
それでも、何を話しかけても、返事を返されることはめったにない。

お年のせいで動作はスローモーションだが、
誰の目にもそれなりに元気そうに見える。
如何なる理由でホームヘルパーが必要なのか判らない御老人である。


家に入り、再度挨拶をしても、お天気の話しをしても、
偏屈さんは相変わらず仏頂面で無視するので、
さっさとエプロンを付け、今日の家事援助予定を一方的に告げて、
先ずは部屋に散乱しているものを片づけ、掃除を始めようとしたら、
わざと?なのか、急にボケの谷間に落ちてしまったのか?
ただ単に遊んで欲しいのか?
新米ヘルパーだと思ってナメているのか?
偏屈ジジィが本棚の本を一冊づつ畳に落とす。

「なんなのよー!このクソジジィ!!」と心の中で叫びつつも、
女性演歌歌手のような、わざとらしさが見え見えの、
自分でも気持ち悪っ!と思えるような作り笑顔を絶やさずに、
偏屈さんが散らかした色褪せた本を本棚に入れ直す。

(あーあ・・・また運悪くボケが出たのかしら?
今は正気なのか?それとも、ボケてるときなのか?
の境界線がはっきりしないし、現実の世界にいるのか、
それとも一時的にあっちの世界に行ってるのかの判断も難しいから
ほんと、まだらボケが一番厄介なのよね・・。
ボケるんなら完全にボケて欲しいものだわよ。
そのほうが対処もしやすいのに・・)

などと思いながら、
ゴミ、否、まだらボケ爺様と格闘すること15分が経過・・・。

いくら、ホームヘルパーという、必殺仕事人を自負していても、
余りにも理不尽な行為には堪忍袋の緒が切れる。
たまらずに、「止めて貰えませんっ!」と言っても止めないので、
「おらぁ!止めんかーーーーいっ!なめたらあかんぜよっ!
と大声で怒鳴ったら、
ビビったのか、一時的に正気に戻ったのか、
急に借りてきた猫状態になり、

「ごめんよ!ごめんよ!母ちゃん。ごめんよ~。」
と言いながら土下座をして謝り、
何故かは知らねど、今度は急にお風呂に入りたいと言い出した。

「んんっ?母ちゃん?私があんたの母ちゃん?
娘ぐらいの年なのになんで母ちゃんなのよ!?」
とまたしても心の中でツッコミながらも、
そこは、新米だけどプロのホームヘルパー。

「はいはい、じゃ、お掃除が終わったらすぐにお風呂の掃除をしますから、
少し待っていてくださいね~♪」と
N代もコロッと態度を変え、
まだらボケ偏屈爺様を縁側まで引きずるように連れて行き、
年代物の籐椅子に座らせて日向ぼっこをさせながら、
偏屈さんの好きな歌、「カスバの女」を子守唄変わりにハミングしながら、
冬なのに汗水垂らして動きまわること一時間・・。

「偏屈さ~ん。お風呂が沸きましたですよ。
湯加減は偏屈さんの好きな43℃にして置きましたですよ。
どうぞ、ごゆっくりお入りになってくださいまし~」
と、またしても、市原悦子さん口調で風呂場まで促す。

どっこいしょ・・と声を出しながら、縁側の籐椅子から起きあがった偏屈さん。
突然にN代の手を取り、
「母ちゃん、今日はボクとても疲れてるんだ・・
だから、母ちゃんも一緒に入って体を洗って欲しいんだ。
母ちゃんも早く裸になってよ~♪」と
訪問したときのあの仏頂面と偏屈態度は何処へやら?
180度の変身ぶりで甘えてくる。


ヤバイ!ヤバすぎるっ!


家事援助ヘルパーは「入浴介助」はできない規則になっている。
「決められた援助項目だけしかできない決まりになってますから。」
などと説明しても、おそらく今の状態では解ってくれそうにもないことは明らか。
それに、利用者様がヨボヨボ、ヨロヨロの御老体でも、
男の筋力には負けるかも・・?
N代はどちらかというと男心をそそる自称スレンダー美人?である。(^^♪
あからさまな拒絶の態度を示したら、何をされるか判らない。

そこで、一計を案じたN代は、
「じゃ、5分間だけ待ってて~ん♪ウフ☆(^_-)-☆」と、
昔の恋人にも、今の夫にも、一度も出したことのないような甘えた声を出し、
なんとか独りで風呂場に行かせることに成功。

そして、風呂場でワクワクしながら母ちゃん?を待っているであろう偏屈さんに、

「偏屈さん。実はワタシね・・今日は風邪気味なんです~。
もし偏屈さんに風邪を移したら申し訳ありませんので、
またの機会に御一緒させて頂きま~す。ごめんなさいね~。」
とドア越しに声をかけた。

案の定・・怒っているのか、
突如として偏屈ジジィモードに突入したのか定かではないが、
返事はない。

N代は急いで帰り支度をして、勝手口のたたきに立ちながら、
偏屈さんが風呂場から出てくるのを見計らう・・。
思った通り、やっぱり・・・素っ裸で出てきた偏屈さんに帰りの挨拶をして、
猛ダッシュで偏屈宅を出た。

普段はスローモーションの動作しかしない爺様だけど、
まかり間違って、火事場の馬鹿力で持って走って追いかけられても困るので、
必死でママチャリをこぎ、やっと人通りの多い商店街まで辿り着き、
息を切らしながら振り返ると、真冬だというのに夏物のパジャマを着て、
母ちゃんを見失ったのか・・・・・
真っ赤な夕焼けを背にして、○○商店街の入り口で呆然と佇む偏屈さんの姿があった。



月日が経つのは早いもので、あれから十数年・・・
今、○○商店街をいつもニコニコと好々爺の顔をしながら、
車椅子に乗せられて、若いヘルパーさんと散歩している姿を見かけるが、
御齢9?歳におなりのはず、
完全におボケお爺様になられたのだろうか・・?

そしてまだ、若いヘルパーさんに「母ちゃんと一緒にお風呂に入りた~い!」
と駄々をこねていらっしゃるのだろうか・・・。
110205ri
蜜月の日々は過ぎゆき忘れ得ぬ愛しき人を想ふ黄昏
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テーマ : シニア・エッセイ ジャンル : 日記

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Re: 元ヘルパーです
こんにちは。
みかんさんのブログはいつも拝読しておりますので、
みかんさんがケアマネさんだということは
承知していました。

今後ますます需要(利用者)が増えることは確実です。
お仕事大変でしょうが、
お身体を御自愛の上、今後とも頑張って続けて頂きたいです。v-352(*^_^*)
元ヘルパーです
すごいタイトルに惹かれおじゃましました。
懐かしく拝読しました。
いろんな方がおられますね。
10年前?
介護保険導入直後でしょうか?

掃除+入浴介助で訪問。
かたづけの後に入浴へと誘ったら
「まぁまぁ~こんなことまでしていただいて」
と、
おかしな喜び方をされたおじい様を思い出しました。

ヘルパーが家事援助をしている間に、
「ひとりの時、倒れたら怖いから」
と入浴される方もあります。

私ごとですが、
体を痛めてケアマネ業務へ変更し、未だ介護の世界の末席を汚しています。
いろんな高齢者、お宅に合わせて仕事をするヘルパーさんは、
介護サービスの中で、一番大変だと常々思っています。

記事の方は、
一人入浴も当時から危険な感じを受けますね?
そうですか?車いすに…
もう過去のヘルパーさんは覚えていらっしゃらないですね?
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プロフィール
Author:千風
気が付けば、シニア.........。 老眼鏡無しには新聞も本も読めず、 体の各部位が少しづつ、 壊れゆく 今日この頃、 この世での 残り時間を思うと、気持ちだけはアセアセ、ジタバタ、 ドタバタ。 心に反比例して 体の動きは うだうだ、だらだら、 とろとろ、のんべんだらりん、だらだらりん・・ついでに座布団に つまづいて すってんころりん。 ころころりん・・。 そんな明日をも知れぬ シニア女が老いと死の狭間で 揺れ動く、 切なくも哀しい乙女心。 じゃなかった・・(^_^;) 「お婆心?」を 時には超真面目に、 また或る時はユーモラスに、 独断と偏見思考で綴っています。
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