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戦争のない状態は「消極的平和」にすぎず、貧困や差別といった構造的な暴力のない「積極的平和」を目指すべきだと提唱したノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥング氏が語る積極的平和の真意。「軍事同盟は不要。北東アジア共同体創設に向け努力を」

「積極的平和主義」を旗印に、戦後日本の安全保障政策の大転換に突き進む安倍晋三首相。半世紀近く前から「積極的平和」を説き続ける平和学の第一人者の目に、今の日本の姿はどう映っているのか。日本の市民らの求めに応じて来日したノルウェーのヨハン・ガルトゥング博士に聞いた。


 ――安倍政権は日本の安全保障の基本理念として、国民の生命を守りつつ、世界の平和と安定のために積極的に取り組むという「積極的平和主義」を掲げています。一方、博士は1960年代に、戦争のない状態は「消極的平和」にすぎず、貧困や差別といった構造的な暴力のない「積極的平和」を目指すべきだと提唱しました。安倍政権の積極的平和主義をどのように評価していますか。

 「積極的平和のことを、私は英語でPositive Peaceと呼んでいます。日本政府の積極的平和主義の英訳はProactive Contribution to Peaceです。言葉だけでなく、内容も全く異なります。積極的平和は平和を深めるもので、軍事同盟は必要とせず、専守防衛を旨とします。平和の概念が誤用されています」

 「参院で審議中の安全保障関連法案は、平和の逆をいくものです。成立すれば、日本は米国と一致協力して世界中で武力を行使していくことになるでしょう。そうなれば、必ず報復を招きます。日本の安全を高めるどころか、安全が脅かされるようになります」

 ――外交や安全保障政策の発想に何が足りないのでしょう。

 「日本外交の問題は、米国一辺倒で政策が硬直していることです。創造性が全くありません。外務省は米国と歩調を合わせることばかり気にしています。米国に問題がある場合は、そこから目をそむけてしまいます。あると言われた大量破壊兵器がなかったイラク戦争を検証していないのも、そのせいです」

 「軍縮を訴えているのに、軍縮を実現するために必要な国際問題の解決策を打ち出そうとはしません。紛争解決に本当に後ろ向きだと思います。興味すらないのではと疑うほどです」

 「硬直しているという点では、憲法9条を守れと繰り返すだけで、具体的な政策を考えてこなかった平和運動も同じです。私が日本に初めて来たのは1968年ですが、9条を『安眠まくら』にしている点は今も変わりません。そうしているうちに安倍政権による解釈変更で9条1項の精神が破壊されようとしています。『安眠まくら』はもはや存在しないことを自覚すべきでしょう」

    ■     ■

 ――安全保障関連法案は、中国や北朝鮮からの脅威に備えるために抑止力を高めるものだと説明されています。

 「日本が米国とともに集団的自衛権を行使するようになれば、中国はさらに軍備を拡張するでしょう。その結果、東アジアにはかつてない規模の軍拡競争が起きる。そこまで考える必要があります」

 「北東アジア共同体の創設を提案したい。メンバーは日本と中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシアの極東部。本部は地理的にも中心で、琉球王国時代に周辺国と交流の歴史をもつ沖縄に置いてはどうでしょう。モデルはEC(欧州共同体)です」

 ――政治体制が異なり、領土問題も抱えるそれぞれの二国間関係を考えると実現は難しいのでは。 「政治体制が異なっても、協力はできます。協力することに慣れていないだけです。互いの悪い点ばかり見ていては関係はよくなりません。共同プロジェクトを通じて良い点を発見しながら、段階的に進めていくのです。すでにNGOや民間レベルでは、相互の交流や協力関係が進んでいます」

 「領有権を主張しあっている土地は、共同管理とする。尖閣諸島も竹島も、北方領土もです。それぞれに言い分があるのですから、そうでないと解決できません。答えは実はシンプルなのです」

 「大切なことは、未来の理想的な状況から考えてみることです。あなたは将来、どのような北東アジアに住みたいか。このことをそれぞれが真剣に考えていけば、共同体はそう遠くない将来に実現すると思っています」

 ――日本とのかかわりが長く、中央大や立命館大などで教えてきました。積極的平和への理解は深まっていると思いますか。

 「たとえば江戸時代は、消極的平和です。戦争はなかったものの、対外関係で何もすることがなかった。積極的平和を実現するためには、未解決の問題を解決して、紛争の種をなくしていく必要があります。解決には和解が伴わなくてはなりません。日本は中国や韓国との和解に向けたプロセスがまだ十分ではありません」

 ――平和貢献のために具体的に何が必要ですか。

 「国際紛争を解決する手段として武力を放棄した憲法9条1項を堅持すると、国連総会の場で表明することです。条文と矛盾する政策は改め、攻撃能力の高い武器は手放す。そのうえで各国に9条の採用を呼びかけてほしい。1928年のパリ不戦条約を実現することにつながるからです」

 「誤解しないでほしいのですが、私は専守防衛のための軍事力は必要だという立場です。百%の理想主義者ではありません」

    ■     ■

 ――世界各地で紛争の解決にかかわってきました。

 「200以上の紛争で仲介役をしてきました。1958年に米国・バージニア州で人種隔離政策の調査をしていた時、黒人の子が白人の子と同じ学校に通うかどうかでもめていた地域の話し合いを手伝ったのがきっかけです」

 ――20世紀に戦争を繰り返したエクアドルとペルーの国境紛争の解決がよく知られています。

 「1995年に当時のエクアドル大統領から、国境線について意見を求められました。私は、土地を共同で管理するという想像力を持つことはできませんかと持ちかけたのです。当初は創造的すぎると受け入れてもらえませんでしたが、同国は3年後に二国間ゾーンを提案、これを一部採り入れる形で和平協定も結ばれました」

 ――紛争解決の経験をもとに理論化を重ねてきました。

 「暴力による解決ではない、別の方法はないものかとずっと考えてきたことが大きいですね。母国のノルウェーはナチスドイツに占領され、医者で政治家でもあった父は強制収容所に送られました。私は当時13歳、地下新聞を配りました。ガンジーの非暴力の思想にも大きな影響を受けています」

 「私はずいぶん悩んで良心的兵役拒否をしたのですが、平和について学ぼうとしたら、戦争について書かれた本しかありませんでした。それで59年に『オスロ国際平和研究所』をつくりました」

 ――独自のネットワークを通じ、中東情勢をどう見ていますか。

 「『イスラム国』(IS)の勢いは止まらないでしょう。イスラム教徒にとっての夢を語っている側面があるので。ある調査では、サウジアラビアの9割以上の人が、ISはイスラムとして正しいと答えています。首を切り落とすことは残虐ですが、民間人もいる地域に空爆を加えることも残虐です。ISの側からすれば、自分たちは米国よりも人を殺していないとなります」

 ――文明の衝突が起きているのでしょうか?

 「いいえ。今起きていることは、もっと深刻で重大なことです。コロンブスの航海に始まる西洋の植民地主義と、民族を分断する形で人工的にひかれた国境線。これを解消しようとする動きが生まれ、対立が起きているのです。ISは、かつてイギリスの植民地であったイラクを、フランスの植民地だったシリアを取り戻そうとしています」

 ――日本はどのように向き合っていけばよいでしょうか?

 「西洋の植民地主義に対抗した唯一の国が日本でした。当時の日本が非暴力の形で、支配されている人たちに呼びかけていれば、歴史は変わっていたかもしれません。安倍首相は戦後70年の談話で、戦前、日本が国際秩序への挑戦者となってしまった過去に触れました。けれども、植民地主義というものは挑まれて当然のものだったと思います」

 「日本が米国と軍事力を一体化させていけば、中東で米国の主導する作戦に従事することになるでしょう。そうなれば、植民地主義の継続に加担してしまいます。米国に追従するのではなく、歴史にもとづく独自性を、外交において発揮してもらいたいです」

    *

 Johan Galtung 1930年生まれ。平和研究の国際NGO「トランセンド」代表。元オスロ国際平和研究所長。87年にスウェーデンの財団から「もうひとつのノーベル賞」ライト・ライブリフッド賞を受賞。


 ■取材を終えて

 「日本の平和運動は一国平和主義」「メディアは暴力ばかりとりあげて、解決策を探ろうとしない」。辛辣(しんらつ)な言葉が続いた。特別な思い入れがあるだけ、日本の今の状況がもどかしいのだろう。博士の指摘や提案を「理想に走りすぎ」「浮世離れしている」と遠ざけてしまうことは簡単だ。その方が頭も心も乱れないですむ。けれども、それこそが思考停止なのではないかと思う。

 引用元:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11931897.html

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気が付けば、シニア.........。 老眼鏡無しには新聞も本も読めず、 体の各部位が少しづつ、 壊れゆく 今日この頃、 この世での 残り時間を思うと、気持ちだけはアセアセ、ジタバタ、 ドタバタ。 心に反比例して 体の動きは うだうだ、だらだら、 とろとろ、のんべんだらりん、だらだらりん・・ついでに座布団に つまづいて すってんころりん。 ころころりん・・。 そんな明日をも知れぬ シニア女が老いと死の狭間で 揺れ動く、 切なくも哀しい乙女心。 じゃなかった・・(^_^;) 「お婆心?」を 時には超真面目に、 また或る時はユーモラスに、 独断と偏見思考で綴っています。
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